インフレ目標(2%)をなぜFRBや日銀は設定するのか?

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なぜアメリカのFRBや日銀のような各国の中央銀行は、インフレ目標(2%)を設定するのでしょうか?その理由と、実際に起こっている問題について詳しく解説します。



インフレ目標(2%)をなぜFRBや日銀は設定するのか?

インフレのトレンドは、主に人々の見通しによって決まるため、中銀とそのインフレ目標による影響を受ける。消費者や企業、労働者が2%のインフレ率を見込めば、実際のインフレ率が2%となるよう物価や賃金が設定される。

しかし、現在の景気拡大局面が始まった2009年以降、インフレ率は継続的に2%の水準を割り込んでいる。

今後はFRBが2%の目標を取り下げ、新たなインフレトレンドとして1.5%の水準を受け入れることだ。ただ、そうすればFRBの信認が損なわれる上、低金利環境が続き、リセッション回避に向けたFRBの利下げ余地を狭めることになる。歴史の教訓に従えば、リセッションはインフレトレンドをさらに押し下げる。

いずれの選択肢も受け入れ難いが、明らかにインフレ目標の断念はより許容できない。イエレン議長が最終的に、インフレ低下はノイズではなく、トレンドを反映していると断定すれば、失業率のさらなる低下と低金利の長期化、そして金融・経済のボラティリティー増大に備えるべきだ。

09月14日 10時19分 DJ-【コラム】低インフレへの処方箋、FRBにはいずれも苦し い

 失業率とインフレ率は数十年ぶりの低い水準にある。これを好まない人などいるだろうか? まず思い浮かぶのはジャネット・イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長だ。

 これは夢のような世界だが、イエレン議長にとっては悪夢かもしれない。彼女の世界観では、失業率がここまで(8月は4.4%)まで下がれば、インフレ率はFRBが目標とする2%に向けて上昇するはずだ。だが実際には、1.5%前後の水準に張り付き、FRBに受け入れ難い選択肢を迫っている。インフレ率を押し上げるため今後数年間にわたり経済を意図的に過熱させた後、インフレ率が目標を上回るのを防ぐためリセッション(景気後退)を招くか、それとも2%のインフレ目標を断念するかという選択だ。後者を選べば、将来リセッションに陥った際にFRBの対応能力が制約されかねない。

 これは脅しではない。インフレの仕組みに関する中銀関係者の理論的帰結で、その中心にあるがフィリップ曲線だ。つまり、失業率が均衡水準を上回るとインフレが鈍化し、物価や賃金に下落圧力がかかる。均衡水準を下回れば、言い換えれば完全雇用の状況に達すれば、インフレ率は加速するというものだ。

 これはインフレ率が景気循環を通じて、概ね長期トレンド水準で推移することを意味している。インフレのトレンドは、主に人々の見通しによって決まるため、中銀とそのインフレ目標による影響を受ける。消費者や企業、労働者が2%のインフレ率を見込めば、実際のインフレ率が2%となるよう物価や賃金が設定される。

 現在の景気拡大局面が始まった2009年以降、インフレ率は継続的に2%の水準を割り込んでいる。2007~09年の世界的な金融危機の余波で経済に生じた多大な緩みが原因なのかもしれない。だが現在、失業率は約16年ぶりの低水準にあり、均衡水準に関するFRBの見通しである4.6%を割り込んでいる。FRBが物価の目安として注視しているコア個人消費支出(PCE)物価指数の上昇率は、足元で前年比1.4%に鈍化した。

 考えられる理由は主に、以下の3つだ。

 1つ目は経済がまだ完全雇用に達していないことで、均衡水準が低下したか、多くの失業者数がきちんと統計に反映されていなかった可能性がある。だが歴史的な動きや、人手不足についてますます多くの情報が伝えられる現在の状況は、こうした見方を裏付けていない。

 2番目はイエレン議長が主張している「ノイズ」だ。携帯電話料金や処方箋薬の一時的な値下がり、オンライン購入の拡大が基調的なトレンドを覆い隠している可能性がある。だが一時的な動向では、数年にわたってインフレ率が目標を下回っている状況を説明できない。ラエル・ブレイナードFRB理事は先週、薬価の値上がりなど、昨年見られた一時的な要因は逆方向に作用するはずだと指摘している。

 3つ目はインフレトレンドの低下だ。最近までFRB当局者はこの可能性を一蹴していた。人々は依然としてインフレ率が2%に回帰すると予想しているとする調査に触れ、2%の目標達成に注力するFRB の姿勢が寄与していると主張していた。だが、それは思い違いではなかろうか。インフレ期待はおおむね、実際のインフレ率に左右されることが大きく、1982年以降、リセッション後は必ず、コアインフレ率が前回の景気局面の平均を下回ってきた。1980年代の平均は4.1%、1990年代は2.1%、2000年代は1.9%、そして2009年以降は1.5%だ。

 2014年6月の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨によると、FRBスタッフはインフレトレンドの予想値をわずかに引き下げた。FRB幹部はこれまで予想値の引き下げに消極的だったが、ここにきて状況は変わりつつある。ブレイナード理事は学術研究や消費者調査、インフレ連動債の動向を根拠に、インフレトレンドの水準が過去10年に0.25~0.75%ポイント下がったとの見方を示している。

 FRBはインフレ押し上げに向けて、過去35年と反対のことを行う必要がある。インフレ率が2%の目標に回帰するまで、失業率を均衡水準以下に押し下げるような景気拡大を長期間維持するのだ。実際にインフレ率が上昇すれば、インフレ期待を押し上げ、より高いインフレトレンドを定着させられる。これを実現するには、少なくとも金利をあまり引き上げるべきではないとブレイナード理事は述べている。FRBは来週のFOMCで、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1~1.25%に据え置く見通しで、12月の利上げ観測も後退している。 

 インフレトレンドの低下は上昇よりも、経済に重大な影響を与える。過去数十年にわたり、インフレに影響を及ぼすのに必要な失業率の変動幅はますます大きくなっている。フィリップ曲線に批判的な人々はこれを理由に、同理論はナンセンスだと主張する。中銀関係者はフィリップ曲線が単にフラット化しただけと結論づけている。

インフレ率を0.5%ポイント押し上げるには、失業率が約3.5%に低下し、その水準に5年間とどまる必要があるかもしれない。その後、インフレ率が目標を上回らないよう、FRBは経済を減速させ、失業率を4%以上の水準に誘導しなければならない。理論上は、リセッションを回避できるほど緩やかなペースで実施できる。だがゴールドマン・サックスによると、実際には1948年以降、リセッションを招くことなく失業率をそれほど押し上げたケースは皆無だ。

このやり方は「金融の過剰」という別の問題を深刻化させる恐れがある。現時点で株価や不動産価格にバブルの兆しがみられるとしたら、もう5年間、低金利が続いた場合の状況を想像してほしい。

代替策はFRBが2%の目標を取り下げ、新たなインフレトレンドとして1.5%の水準を受け入れることだ。ただ、そうすればFRBの信認が損なわれる上、低金利環境が続き、リセッション回避に向けたFRBの利下げ余地を狭めることになる。歴史の教訓に従えば、リセッションはインフレトレンドをさらに押し下げる。

 いずれの選択肢も受け入れ難いが、明らかにインフレ目標の断念はより許容できない。イエレン議長が最終的に、インフレ低下はノイズではなく、トレンドを反映していると断定すれば、失業率のさらなる低下と低金利の長期化、そして金融・経済のボラティリティー増大に備えるべきだ。

 出典:Dow Jones

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