なぜFRBは金利の見通しを発表するのか?FRBの狙いは?

frb金利見通し

FRBはなぜ向こう3年間の金利の見通しを発表するのか?FRBの狙いはいったい何なのか?

誰も教えてくれないその目的と、それに伴うリスクについて解説します。

FRBが金利見通しを発表し、利上げを行う理由

現在の中央銀行FRBは、インフレ率を目標に置き、今後の金利の調整について大量の情報や見通しを市場に伝えるという手法を取っている。FRB高官は向こう3年間の金利の見通しを公表したり、声明や講演、インタビューを通じて今後の金利の調整を示唆したりしている。しかし多くの場合、金融の安定は物価の安定以上に重要だ。しかも先々の金利の動きについて透明性を保つことで破壊的な投機が促されることもある。

06月26日 08時23分 DJ-【寄稿】FRBはサプライズをもっと活用せよ

――筆者のマラビー氏は外交問題評議会(CFR)の上級研究員。著書に「The Man Who Knew: The Life and Times of Alan Greenspan(知っていた男 アラン・グリーンスパンの人生と時代)」(ペンギン・プレス)がある

 不吉なことだが月を追うごとに、米国経済はますます1999年や2000年代半ばと似通った状態になっている。この2つの時期の共通点は、完全雇用、低インフレ、楽天的なムードがそろっていたところで金融市場が混乱し、その混乱をきっかけに景気後退が起きたことだ。残念ながら、ジャネット・イエレン議長率いる米連邦準備制度理事会(FRB)はそのリスクを抑えるはずの比較的痛みの少ない政策に目もくれない。

 金利に関するFRBの決定を巡る議論は「フェデラルファンド(FF)レートを引き下げるべきか引き上げるべきか」を中心に進むことが多い。そうなると当然、相反する兆候を分析することになる。例えば最近では、インフレ率はFRBが目標とする年2%を下回った状態が続いている。これは利下げ要因だ。ただ失業率は極めて低く、金融緩和で資産価格は持続不可能なレベルにまで膨張した可能性がある。この2つは利上げを支持する要因だ。

 別の議論がこうした苦境からFRBを救い出してくれるかもしれない。イエレン議長が進める、どちらかと言えば穏やかな金融引き締めのペースが適切だとしても、FRBは引き締めの方法を調整することで金融崩壊の可能性を引き下げることができる。

 そのためにはFRBは中央銀行の信念の1つである「透明性は常に善」という認識を見直す必要がある。透明度を下げる――そして意図的に投資家を驚かせる選択肢を留保する――ことで、FRBは投資家による過剰なリスクテークを抑制することができるかもしれない。

 確かにこのような奇襲作戦は市場の動揺を誘うだろうが、それこそが重要な点だ。1990年代末と2000年代半ばの経験から痛い思いをして学んだ教訓とは、金融市場があまりにも静かだと過剰なリスクテークにつながり、過剰なリスクテークは市場崩壊の可能性を高める、ということだった。1990年代末のケースでは、2000年にIT(情報技術)バブルの崩壊が、2000年代半ばのケースではサブプライム住宅ローン問題に端を発した世界規模の金融危機が起きた。市場の大混乱が直近2回の景気後退を招いたのだから、次の景気後退の確率を下げることはFRBの優先事項でなければならない。

 静かな市場と過剰なリスクテークが上記のような関係にあることは市場心理から読み取れるだけではなく、いわゆる「シャープ・レシオ」からも分かる。シャープ・レシオは1990年にノーベル経済学賞を受賞したスタンフォード大学の経済学者、ウィリアム・シャープ氏の名を冠した指標。予想収益(専門的に言えば米国債の金利などリスクゼロの金利を上回る超過収益)を予想ボラティリティーで割ることで、投資対象――株や債券、または複数の金融商品の組み合わせ――の魅力を測定することができるというものだ。例えば投資家がある投資で年6%の収益が期待できると考えたとしよう。ボラティリティーが低ければ非常に割安だが、市場が荒れてリスクが高いようであれば、6%では割に合わない。

 リスクがさほど高くないように見えると、ウォール街は資金を借り入れて、シャープ・レシオで収益率が高いと思われる対象に投資することになる。多くのアルゴリズム取引のシステムはこうした取引を自動的に行っている。直近の市場動向から市場が安定していることが分かると、借り入れを増やして投資を膨らませるようにプログラムされているのだ。人間のトレーダーもこれと同じことをしていて、ボラティリティーが下がると持ち高をどっと増やす。これが「ボラティリティー・ターゲティング」と呼ばれる投資戦略だ。

 さらにウォール街には「ボラティリティーを売る」戦略もある。市場が落ち着いているときに利益を上げるには、将来の混乱に備えた保険を売ればいい。トレーダーはオプションを売り、市場暴落のリスクを背負うことでプレミアムを手にする。トレーダーはオプションを売れば売るほど、市場が安定するとの予測が実現するような投資行動を促す。その予測が自己実現的になったところで、衝撃的な出来事が起きれば不安が急激に高まり、オプション取引の魔法で不安定な市場はますます不安定になる。1987年の株価暴落時にも同じような力が働いて市場の下落を増幅させた。

この1カ月、筆者はロンドンやニューヨーク、シンガポールのトレーダーがボラティリティー売りの危険性を指摘するのを耳にしている。ヘッジファンド「タコニック・キャピタル」の共同創業者フランク・ブローセンス氏は米国の株式市場でボラティリティー売りがどの程度の規模で行われているかを評価しようした。同氏は現在、市場の崩壊に積極的に投資するほど警戒してはいないが、崩壊のリスクに備えてある程度の保険をかけたと筆者に語った。

 市場で不気味な静けさが続けば続くほど、ボラティリティー売りが広がる危険性は大きくなる。しかも短期借り入れの実質的なコストがマイナスかゼロ近辺にとどまると予測できる期間が長引けば、資金の過剰供給が最終的に経済の不安定化を招く可能性は高くなる。

 こうした状況で、FRBはなぜ市場が落ち着いていることを強調するのか。その答えの一つは、FRBの指導部が悪人を演じたくないことにある。1970年代の経験を反省して、彼らはインフレの脅威が迫ってきたら利上げを実施して雇用を破壊しなければならないことは承知している。しかし2008年に得た教訓、つまり将来的に起こりそうな非常に破壊的な暴落を食い止めるためには市場が短期間、多少不安定になることを受け入れる必要があるという教訓はまだ理解していない。それどころか市場が落ち着いていれば落ち着いているほど、中央銀行の自尊心はますます満たされる。

 もう一つの答えは、中央銀行が非常に複雑な課題を目の前にして、単純さに魅力を感じすぎていることにある。1979年から1982年の「マネタリスト」の時代には、他の多くの中央銀行と同様、FRBもマネーサプライの伸び率という一つの指標を目標に置いて経済のかじ取りをしていた。しかしFRBは間もなくマネーサプライを目標とした政策運営を断念した。「マネー」の定義や測定が困難であることが分かったからだ。

 現在の中央銀行は、インフレ率を目標に置き、今後の金利の調整について大量の情報を市場に伝えるという手法を取っている。FRB高官は向こう3年間の金利の見通しを公表したり、声明や講演、インタビューを通じて今後の金利の調整を示唆したりしている。しかし多くの場合、金融の安定は物価の安定以上に重要だ。しかも先々の金利の動きについて透明性を保つことで破壊的な投機が促されることもある。

 サブプライムローン問題に端を発した危機が発生する約3年前の2004年1月の段階で、FRBは金融リスクの高まりを目の当たりにしていた。インフレ率は低く、FFレートは1%と低水準で、持続不可能なほど資産市場が膨張するリスクがあった。当時のアラン・グリーンスパンFRB議長はその年初めて開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で「潜在的な反発効果は大きい」ことを認めた。「私の見るところ、われわれは現段階において、心理の極めて劇的な変化の影響を受けやすい状態にある」

 言い換えれば、現在のFRBと同じく、グリーンスパン氏とその同僚たちは、消費者物価が安定する金利水準で、資産価格が不安定化する危険に直面していた。FRBはその行動を予想しにくいものにすることでこの窮地から脱することもできた。しかし当時のFRBはその意図をにおわせ、サプライズを避けた。その結果、市場が落ち着いたのは「中央銀行家の夢」だとグリーンスパン氏の同僚の1人は述べている。2005年5月、グリーンスパン氏は「市場はわれわれがさまざまな出来事にどのように反応するかをだいたい予想している」と喜んだ。FRBが金利を動かしても反応は極めて小さいとも語った。

 後知恵ではあるが、市場の反応がなかったことこそが不幸の始まりだったことをわれわれは知っている。1人の中央銀行家の夢は別の中央銀行家の悪夢となった。FRBは早急にこの教訓を受け入れる必要がある。

出典:Dow Jones

【まとめ】なぜFRBは金利の見通しを発表するのか?FRBの狙いは?

現在の中央銀行FRBは、インフレ率を目標に置き、今後の金利の調整について大量の情報や見通しを市場に伝えるという手法を取っています。

これは、FRBの信念の1つである「透明性は常に善」という認識からきている。FRBは、その信念のもと向こう3年間の金利の見通しを公表し、FRB高官は声明や講演やインタビューを通じて今後の金利の見通しを示唆したりしている。つまりFRBが金利の見通しを発表する目的は、市場の安定化のためなのです。

しかし先々の金利の動きについて透明性を保つことで破壊的な投機が促されることもあります。例えば、2008年のリーマンショックです。将来的に起こりそうな非常に破壊的な暴落を食い止めるためには市場が短期間、多少不安定になることを受け入れる必要があるという教訓をFRBはまだ理解していない。という警告の声が市場の一部では指摘されています。

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